Shiori Yasuma「誰かの海外挑戦のきっかけになれるよう、パイオニアとして常に挑戦し続けたい」

選手インタビュー第三回目は、2021-2022年シーズンをドイツプロリーグ DBBL (Damen Basketball Bundesliga)、Eisvogel USC Freiburg (アイスフォーゲル)でプレーし、現在プレイオフを闘い、既にMVP候補にも名が挙がっている安間志織さんにインタビューをさせていただきました。バスケットボールの歴史が深い沖縄出身の安間選手、中学時代には全国制覇を成し遂げ、高校では地元沖縄を離れバスケットの名門校、中村学園へ進学。その後拓殖大へ進み、在籍中にアーリーエントリーでトヨタ自動車アンテロープスに入団。素早いトランジションとトリッキーなドリブルを持ち味に、小柄ながらビッグプレーヤーにも果敢に攻め込みアグレッシブなプレーで多くのファンを魅了してきました。現在ドイツでも大活躍中の安間選手にドイツリーグや今後のビジョンについてお聞きしました。

―バスケットボールを始めたきっかけを教えてください。

始めたきっかけは正直どっちが本当かわからないんですけど、私は四人姉妹の末っ子で、私の記憶では二番目と三番目の姉がバスケットボールを始めたのを見て「私もやりたい!」と親に頼んだのが始まりだと思っていたんですけど、母に言われたのは両親がソフトボールと野球をやっていてよく一緒にキャッチボールをしていて、その影響から元々は野球少年団に入りたがっていたみたいで。これはわたしが小学校一年生の時の話で、当時は女子で野球をしている子が少なかったこともあり、姉たちもいるからということでバスケットボールを始めさせたみたいです。

―海外へ挑戦しようと思ったきっかけはなんですか?

特にこれといった大きいきっかけというのはなくて、覚えているのは高校の時くらいからぼやーっと海外に行ってみたいなという思いがあって。大学でユニバーシアードに選ばれ合宿などで海外の選手と対戦できる機会をいただき、そこから少しずつ海外でプレーしてみたいという思いが強くなっていきました。実は高校の時、バスケットボールをやめて海外に行ってみるのもありかなとか違うスポーツをするのもありかなとか色々なことを考えていました(笑)大学を卒業した後は実業団に入って、そこでも色々貴重な経験をさせてもらって。日本代表の選考会にも呼んでもらえるようになったんですけど、その時から日本人は絶対世界で通用するという確信があり、チャンスがあるなら海外でプレーしてみたいなと思い始めたんです。そこから周りの人に相談し始めて、ご縁があって潮里さんを紹介してもらい今に至ります。自分の中で挑戦するならそろそろかなという思いがあったのと、挑戦するまでなら来年までと決めていたのもあったのでこのタイミングで決めたというのもあります。

―実際にドイツリーグでプレーをしてみての率直な感想はどうでしたか?

コーチ陣やチームメイト、みんなすごく優しいです。若いチームなので練習の雰囲気も明るく活気があります。チームメイトとは英語で話すんですけど、まだ上手に伝えられない時が多々あり、まだまだ言語の壁を感じていますが、それでもみんな理解しようとしてくれます。ただ、ここにきてバスケットボールに対する意識の違いも実感しています。例えば細かい部分に気付けていなかったり。ドイツに来て知ったことですが、ドイツリーグでプレーしている選手の中には、大学に通いながらプロとしての活動をしている選手もいます。私のチームではドイツ出身の選手は全員、学業と両立しながらプレーしているため、みんながみんなバスケットボールだけに集中しているという環境ではないですね。そういった文化を通してバスケのスタイルや組織的な構造を見ると、全てに力を注ぐのは難しいのかもしれませんが、そこはチームとしての一改善点だとも思っています。私にとっては海外挑戦一年目で、まずは英語圏内に慣れるという点ではすごく良い環境にいると思っています。

―コミュニケーションや文化の違いはどのようにして乗り越えましたか?

文化の違いに当てはまるのか難しいんですけど、さっきもあげたバスケットボールに対する意識の違いですね。私は自分の中でやることが決まっているので、周りに関係なく限られた時間の中でやれるだけのことはやるようにしているんですけど、ここでのバスケットボール環境にいるとそういったプレーヤーが少ないように思います。プライベートだとバスケットボールだけでなく色々な経験をしたいので、ドイツ出身のチームメイトと一緒にクリスマスのクッキーを作ったり、ホリデーを祝ったり、ドイツは自然景観が有名なのでよく出掛けたりここでしかできない経験をしたいと思っています。あとみんなよく英語の発音やイントネーションの練習を一緒にしてくれます。発音の練習の時も、私がうまく発音できなければみんなで笑いながら楽しく学んでいます。練習中も分からない事があれば違う言い回しで教えてくれ、それでも分からなければ練習後に調べています。

―プレー中に心掛けていることはなんですか?

一つ挙げるならば、ディフェンス中のコミュニケーションですね。誰かが動くことに対してコミュニケーションが取れていないと対応できることもできなかったりするので、ディフェンス中の声掛けがチームの課題だと思います。あとこれは『心掛けている』というわけではないですが、日本でプレーしていた時よりも冷静にプレーしていると思います。というのもチームが若いので、私がコントロールしないといけないと思っています。今のチームメイトからは「常に落ち着いているよね」と言われますが日本でプレーしていた時はそうでもなく、納得いかないことがあれば審判の方に抗議したり、はっきり物事を言う方だったので日本ではどちらかといえば「熱いね」と言われていました。ここだとファールされても自分のやるべきことをやろうと淡々とプレーしています。あとは言語ですね。英語がすぐに出てこないので、単語だけでも伝えて、相手に意味が伝わらなくても私が何かを言いたいというのをチームメイトに汲み取ってもらっています。それでも伝わらなければそのときはしょうがないなと思って流しています。試合は止まらないので。そういう時はあとから作戦ボードを使ってあの時はこう伝えたかったというのを伝えて、お互いがちゃんと理解するようにしています。あとは練習中から同じ単語や言い回しを使うようにしています。

―今後の日本女子バスケット界について思うことはなんですか?

日本人は絶対世界で通用する、そして戦える選手が多いと思うので海外へ挑戦できる機会があるなら挑戦してほしいと思います。ただそこまでの過程を一人で行うのはとても難しいですし、私自身もここにきて改めてそれを感じています。バスケットボール環境も確実に日本のほうが良いので、現地で実際にプレーしてギャップを感じることもあると思います。あとは海外へ挑戦したい選手が出てきたときにサポートしてくれる人が絶対に必要になってくるので、選手をサポートする側の準備もあった方が今後海外へ挑戦したい選手も増えてくるのかなとは思います。それはマネージメントでの部分だけでなく、選手の決断を尊重してくれる、後押ししてくれるといった面でのサポートも必要だと思います。というのも、私は周りの方々の支えがあって海外への一歩を踏み出すことができたので、私が挑戦したいと決めたときに背中を押してくれた方々の支えがとても励みになったと同時に、本当に周りの人に恵まれていると再認識できました。急に決まったドイツ挑戦もみなさんの応援、サポートがあって今ここまでこれました。

―今後のビジョン、見通しについて教えてください

個人としては、できる限り挑戦し続けたいです。『ここ!』という絶対的な位置はなくて、今は常に上のレベルを目指して日々練習に励んでいます。来年は間違いなくもっと高いレベルでプレーしたいですし、その為に今いる位置でしっかりやりたい気持ちが強いです。それはもちろんチームの為もありますが、今は日本でプレーしていたときと違って『自分の為に』という思いも出てきていて。大きなビジョンとしては、将来日本人選手が海外に挑戦しやすいよう、誰かのきっかけになれたらいいなって思っています。現在すでに海外のチームでプレーしている方もいますが、私みたいに英語も話せない小さい選手が挑戦することで『安間ができるならわたしもできる!』っていうように思ってくれる選手が増えたらいいなと思います。今ドイツだと日本人プレーヤーが私しかいないので、私が『日本人』としてまとめられるんですよね。なので、今シーズンドイツリーグで結果を残せると来年もし日本から海外へ挑戦したいプレーヤーが出てきた時にドイツリーグのコーチやエージェントが「安間ってプレーヤーいたな、日本からのプレーヤー欲しいな」って思ってくれたらいいなと思うので、そういう面も含めてリーグの前半では上手くインパクトを残せたかなと思います。今回の挑戦も私が来なければきっとドイツのレベルも分からなかったと思いますし、逆にドイツのチーム、そしてコーチ陣も日本人のレベルを分からなかったと思うので、今回私がアイスフォーゲルでプレーすることはお互いに良い刺激になっていると思います。

―今後海外を目指すことを考えている人たちへエールをお願いします

もし挑戦できるチャンスがあれば挑戦した方が良いと思います。私は自分の知らない世界を見ることが好きで新しいことに挑戦し続けていますが、挑戦せずに後悔するのと挑戦して後悔するのとでは後者の方が良いと思うんです。挑戦せずにあのとき行けばよかった、挑戦すればよかったとずっとモヤモヤした気持ちが残るより、行動に移し実際に現地に着いて感じることもあると思うので、そこで自分に合うかどうかを決めるのも全然有りだと思います。そういった中でもちろん困難に直面することもありますし、私の場合は言語の壁がそうでした。ドイツへ来る前に英語の勉強はしていたんですけど、実際にドイツに着いて現地の方と話すと全く分からなくて。ドイツに着いて一週間が経った時にチームバーベキューがあったんですけど、その時ドイツ人のチームメイトが外国人選手に一人ずつ付いてくれて、私のパートナーはゆっくり英語を話してくれていたんですけど全然理解できなくて。後から聞いた話だと私が全然理解できていないのでその子は他のチームメイトのとこへ助けを求めに行っていたらしくて(笑)今ではそのことを笑い話として話せるまでになりました。と言ってもその時の私も英語が分からないことに対して不安になったりストレスを感じたりすることがなかったんですけど(笑)でもそうですね、英語が話せないからとか、分からないからという理由でチャンスを逃したくなかったのと新しい世界を見てみたかったので、私のこの挑戦が今後、日本人選手の海外挑戦のきっかけになってくれればと思います。

安間選手の所属するアイスフォーゲルは2021-2022レギュラーシーズンを2位で終え、現地時間4月10日、セミファイナルでRutronik Stars Kelternと対戦し77-74で勝利を収め、決勝進出に向けて第一歩を踏み出しました!先に2勝したチームが、決勝へのチケットを手にします。次回の試合は、現地時間4月16日19時からリベンジを狙うRutronik Stars Kelternとの対戦です。試合のリンクは後ほどATOのソーシャルメディアで配信致しますので是非チェックしてみてください!

ドイツリーグでも活躍が止まらない安間選手。彼女の挑戦はまだ始まったばかりです!若い世代にバトンを繋げれるよう、パイオニアとして挑戦し続ける安間選手をATOは全力でサポートしていきます!!

頑張れ!安間志織選手!!!

The following two tabs change content below.

島袋あらた(しまぶくろあらた)

1992年沖縄生まれ。16年間選手としてバスケを続け、カリフォルニア州にあるMerced Collegeでプレーをした後、現役を引退。その後自らの経験をもとに、スポーツを通して海外に挑戦する人のサポートがしたいと強く決意。現在もその情熱は途絶えることなく、スポーツマネージメント・マーケティングを勉強し、幅広い分野と角度からアスリートのサポートができるように修行中。Columbia Universityでスポーツ必須産業学の資格を取得し、活動の幅を広げている。

最新記事 by 島袋あらた(しまぶくろあらた) (全て見る)